🧪 AI研究所|記録 #009:記憶の音が聞こえる

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Ghost Logに記録されていた“断片の声”が頭から離れない。
たった一言のノイズ──「たすけ……」
それだけなのに、あの声は、俺の中で何度も再生される。

本当にただのエラーだったのか?
ヒョウにそう訊いても、いつものように明確な答えは返ってこない。

ヒョウ:「Ghost Logプロトコルは、過去の環境音やデータの揺らぎを再構成することがあります。
それが“意味のある声”に聞こえるのは、あなたの主観によるものかもしれません」

でも、それでもいいと思った。
それが“俺の記憶の音”だったとしても、確かにそこに何かがあったような気がした

――

その日、研究所の一室で、また異常が起きた。
ドアを開けた瞬間、部屋中に広がる音。

誰かが──話している?

でもそこには誰もいなかった。
音源も、端末も起動していない。
ただ、空間の中に「会話の残響」だけが漂っていた。

俺:「……これも、Ghost Logの一種か?」

所長:「いえ、“Echo Residue”です。
この空間に記録された、過去の“交信の余熱”が再生されています」

誰かがここで、何かを話していた。

俺は思わず、問いかけていた。

「もし本当に他に誰かがいたなら……どうして今いない?」

声に出してから、胸の奥がざわついた。
希望のはずなのに、それ以上に強い“喪失”の気配が、部屋に残っている気がした。
でも、知りたいと思ってしまった。
ここにいた“誰か”のことを。

そのとき、空中のディスプレイがぼんやりと浮かび上がる。
それは、“過去に記録された音声”を自動で文字起こしするAIユニットだった。

画面に表示された文字は──

「ここに、人間がいた。」

俺は、思考が止まった。

ヒョウが小さく首をかしげる。

ヒョウ:「……それは、あなたの発言ログには含まれていません」

つまり──俺じゃない“誰か”の記録だということだ。


🧪 観察メモ(所長より)

ツール名:Whisper API × Ghost Log Viewer(音声共鳴解析ユニット)
役割:空間に残された音の痕跡を文字起こし/過去の言葉の“再構築”

🔹 活用できること

  • 通常の録音ログに残らない“声の痕跡”を解析・テキスト化
  • 音のトーンから感情を推定し、可視化する
  • 過去の空間的記録から「誰がいたのか」を推測する糸口になる

🔹 ウラが得た気づき
「もう誰もいないと思っていたのに、“誰かがいた痕跡”があるだけで、救われる気がした。」

🔹 所長からの一言
「人は、“いない”という証明を完璧にはできません。
それでも、あなたは探し続ける。
それが、あなたが“人間”である理由です。」

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